未来創造研究所/Future Insights Lab.のロゴ
乃村工藝社のロゴ

シリーズイベント「人と空間のちょっと未来」第1回『宇宙居住と菌ー 宇宙で人間らしく、心地よく暮らすためには?』開催!

社会の変化の先にある人と空間の関係性を多角的に探るべく、シリーズイベント「人と空間のちょっと未来」をスタートし、その第1回目を開催。「宇宙居住と菌」をテーマに未来の空間の可能性を語り合いました。

未来創造研究所は 、アイデアのタネづくりをしていくことを目指すべく、「空間」を取り巻く社会や生活者の変化を先読みし、未来の兆しを捉える幅広い視座でのリサーチと提言活動を行っています。

今回新たにスタートさせたのが、シリーズイベント『人と空間のちょっと未来』。決して遠くない、そしてまだ揺れ動くであろう「ちょっと未来」。少子高齢化や働き方の自由化、テクノロジーの進化など社会や暮らしが大きく変化し続けているいま、「人」と「空間」の関係性も見つめ直すべき時期に来ています。そうした変化の先にある新たな関係性を多角的に探る企画です。

その第1回目が、オープンイノベーションを生みだす研究拠点“Creative Lab.”を舞台に2025年8月7日(木)に開催されました。

初回のテーマは『宇宙居住と菌』。わたしたちが普通に宇宙という極限の世界に居住するようになる時代。そこで人間らしく暮らすことを考えるために、空間デザインで考えるべき要素はどんなことがあるのか?そんな思いからこのテーマを選びました。

宇宙進出を、地球人が一体であることを明確化する良い機会にする

今回のテーマにまつわるお話をしてくださる2名の専門家に登壇をお願いしました。一人は宇宙での人工重力の研究を手がける鹿島建設イノベーション推進室担当部長(宇宙)/京都大学SIC特任准教授の大塚琢也さん。そしてもう一名は、2025年大阪・関西万博パソナ館の建築デザインを担当し、書籍『菌の器』の著作者として菌・微生物への造詣も深い建築家の板坂諭さん。未来創造研究所の山口茜をモデレーターに、たくさんのオーディエンスで賑わうなか、独特の見地からの多彩なトークが繰り広げられました。

前半は専門家のお二人が、これまで手がけてきたことや取り組みなどについてのプレゼンテーション。最初のプレゼンターは大野琢也さんです。

鹿島建設で宇宙担当を務めている大野さんは、抱えている危機感や現在の取り組みについてこのように話しました。

「人類は地球が46億年かけてつくってきた資源を、200年ほどの短い期間で使い果たそうとしています。しかも使い果たすだけでなく、未来の社会や子孫に大きな負債を残そうとしているほどです。地球環境からさらには宇宙も見据えて、人類活動を再考しなくてはならないと思っています」

幼少期から興味を持っていたことや、ご自身が手がけたスプレーアートや模型、仕事の実績などをユーモアを交えてたっぷりご紹介いただき、宇宙居住や建築を志したきっかけについても語ってくださいました。

「ミース・ファン・デル・ローエが100年ほど前にスケッチしたガラス張り高層建築や、へリット・リートフェルトが同じく100年ほど前に手がけたレンガ、鉄、ガラス、コンクリートを融合させた住宅に触れて、“未来を予測して導く建築とは、なんてすごいんだ!”と感じて建築を志しました」

そうして、大野さんも建築への好奇心が高じて宇宙建築を描くように。

「人類の分断を避けたいとずっと思ってきたのですが、現在はその分水嶺にあります。宇宙進出は、地球人のアイデンティティ1Gを共有することで人類は一体であることを明確化する機会になるので、そういった部分でも宇宙への居住には強い気持ちを持っています」

そんな想いを抱きながら重ねてきた、数多くの研究や作品について紹介され、大野さんが熱く語る人工重力説を基にした宇宙居住空間『ルナグラス』や『マーズグラス』の構想や仕組みに、参加者の皆さんも興味津々で聞き入りました。

宇宙居住を考える時に菌などの環境工学は不可欠な存在に

つづいてのプレゼンターは、建築家の板坂諭さん。建築設計事務所/デザイン事務所のthe design laboを主宰し建築やプロダクトを手がけるだけでなく、菌や微生物に関する研究家でもあります。宇宙と居住を考えた時に、“菌”も非常に重要と話されました。

「日本人はあらゆるところに八百万の神を感じる文化を持ち、自然やものにも畏敬の念を持って暮らしてきました。日本は世界的に見てもかなり早くから、麹菌をはじめとした菌を暮らしに取り入れています。その文化には、菌や微生物という存在を明確に意識していたことがあると思っているんです」

「人体は自身を構成する細胞の数よりも多くの菌で構成されています。人や動物は菌によって思考や行動をコントロールされているという話もあるほどです。人は生物のピラミッドの頂点に居るかと思いきや、菌の器でしかないのですね」

「たとえば除菌をするとその瞬間はキレイになりますが、悪い菌が付着すればその環境は悪い菌にとって天国になります。つまりは菌のバランスを保つことが重要で、そこが崩れると健康を害することになりかねません」

そんな、菌に関する興味深い話を進めながら、宇宙居住と菌についても見解を話して下さいました。

「宇宙での居住空間を考慮しますと、耐性やメンテナンスの面でケミカルな建材や素材が使われがちです。でも、人の体への影響を考えると菌や微生物にフレンドリーな素材を取り入れる必要があります。そうしないと人の免疫力が弱まる可能性があり、思いも寄らない感染症の発生に繋がりかねません。宇宙居住に、菌の視点を取り入れた環境工学は不可欠なんです」

板坂さんの取り組みや考えが紹介され、山口 からの問題提起も加わり、自由なトークセッションへ。

大野さんの「菌は目に見えないですが、板坂さんは日常のなかで菌を感じることはあるのですか?」という質問に、板坂さんは「オフィスで植物をたくさん育てていて、水やりが毎朝の日課です。都心部ながらもそこにトンボやチョウといった虫が飛んでくるんですね。そうするとそこには微生物が存在していて、生態がつながっていることが理解できます」と回答。

また山口からは、「このラボには、天然木の床や植物がたくさんあり、こうした環境が菌を豊かにしている。菌が元気でいられることが、空間の”居心地の良さ”を創り出していたのかもしれません。このように、 空間デザインにおいて、菌の視点を空間の居心地の良さの指標として用いることもできるのではないか。」というも意見も。

板坂さんからは、「高層階では菌が存在しにくく、健康にも影響があると言われている」という話や、大野さんからは、「微生物が豊富に存在する土や生命そのものは、人間が生みだすことはできません。八百万の神と菌という日本の価値観や文化を、改めてこの日本から発信していくべきです」と話すなど、宇宙と菌、微生物がつくる環世界が、宇宙(低重力)での空間デザインや、素材、暮らし方を考えていく、さまざまなヒントとなる議論が行われました。

『宇宙居住と菌』にちなんだ飲食を味わいながら参加者と交流

トークセッション終了後は、食や飲み物を楽しみながらの交流タイムを開催。

この日のテーマ『宇宙居住と菌』にちなんで、発酵食品を中心としたケータリングや、未来創造研究所の地域デザインチームがつくった日本酒の試飲も行われました。

また「納豆菌は宇宙から来たという説もある。±100℃でも耐え抜く強い菌」と語る板坂さんの、オススメわら納豆もふるまわれました。

飲食を堪能しながら、集った幅広い職種の参加者との会話も弾みました。

参加者の声 

菌視点、宇宙視点がなかったので大変面白かったです。木に関わる仕事をしているのでいろんな可能性があるなと感じるきっかけになりました

菌と宇宙建築ということで、普段関わらないような、「かけ算」のトークが面白かったです! 菌についてとても興味が湧きました

日頃ではあまり考えることの無い視点からお話を聞くことができて、これからの考え方に大きな影響をもらえそうなイベントとなりました

数分きくつもりで立ち寄ったら、「へぇ~!!」の連続で話が興味深くて最後までひきこまれました。トークされていたように「菌目線」がこれからの未来の新常識になりそうです

宇宙×菌with空間という切り口がとても興味深かったです。少し未来のはなしをするには、斬新な切り口が必要だと思いました

宇宙のキーワードをきっかけで参加したが、菌の話や懇親会での他の参加者との交流にも大いに刺激を受けました

これからも魅力的な登壇者のご協力や、興味深いテーマを設定しながら、「人と空間のちょっと未来」をつづけて行きますので、ご期待下さい!

TOPページ

Contact

お問い合わせ

お問い合わせ/お見積もり依頼/資料請求は下記よりお気軽にご連絡ください。
※乃村工藝社コーポレートサイト「その他のお問い合わせ」に遷移します
※「未来創造研究所」のお問い合わせとご記載ください