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シリーズイベント「人と空間のちょっと未来」 第2回『多拠点生活と渡り鳥のくらし―ヒトの住まい方と、ツバメの棲み方』開催!

シリーズイベント「人と空間のちょっと未来」の第2回目を開催。「多拠点生活と渡り鳥のくらし」をテーマに未来の空間の可能性を語り合いました。

少子高齢化や働き方の自由化、そしてテクノロジーの進化など社会や暮らしが大きく変化し続けているいま、「人」と「空間」の関係性も見つめ直すべき時期に来ています。

自分たちを起点に、さまざまなアイデアのタネづくりを目指し活動をつづける未来研究所は、そうした変化の先にある新たな関係性を多角的に探るべく、シリーズイベント『人と空間のちょっと未来』をスタートさせました。

2025年8月に第1回として開催され、大好評を博した前回のテーマは『宇宙居住と菌』。地球におけるこれからの暮らしや、人と空間の関係についてゲストと共に探りました。
▷第1回の模様はこちら

そして2回目となる今回は、『多拠点生活と渡り鳥のくらし ―ヒトの住まい方と、ツバメの棲み方』がテーマ。
多拠点生活をはじめライフスタイルや価値観が多様化するいま、渡り鳥の暮らしや棲まい方にヒントを得ながら、これからの私たちの“居場所の在り方”を探る企画です。

これまで「居住」と言えば、終の棲家という言葉に象徴されるように固定的な視点で考えられてきました。しかし、自然界に目を向けると、野生動物たちは季節や環境の変化に合わせて柔軟に居場所を変えるという、フレキシブルな生き方・暮らし方を実現しているのです。価値観もライフスタイルも変化しつつある今だからこそ、これからの私たちの居場所の在り方を見つめたいと考えました。

今回は地方移住や二拠点居住等の支援を手がける吉冨諒さんと、ツバメなど渡り鳥の研究を行う北村亘さんをゲストに迎え、プレゼンテーションやクロストークを通して「人と空間のちょっと未来」を考察します。

多拠点生活のハードルが下がり、どんどん身近なものになっている

『多拠点生活と渡り鳥のくらし ―ヒトの住まい方と、ツバメの棲み方』がテーマの今回、それぞれ異なるジャンルのエキスパートである2名の専門家に登壇いただきました。

一人は、公益社団法人 ふるさと回帰・移住交流推進機構 ふるさと回帰支援センター プロジェクトマネージャーの吉冨諒さん。地域での暮らしや多拠点生活の専門家です。

そしてもう一方は、東京都市大学 環境学部 環境創生学科 准教授の北村亘さん。ツバメの浮気研究やコアジサシの繁殖行動、渡り等の研究を手掛けておられます。

未来創造研究所の鈴木和博と土金慧子がモデレーターを務め、たくさんのオーディエンスで賑わうなか、多彩なトークを繰り広げました。

イベントの前半は、ゲストのお二人がそれぞれの視点からのプレゼンテーションを展開。最初のプレゼンターは吉冨さんです。

「ふるさと回帰・移住交流推進機構 ふるさと回帰支援センターに寄せられる移住相談に、興味深い変化が見られるんです。2008年当時は50代以上の高い年齢層からの相談が7割以上を占めていましたが、近年はそれが逆転し、40代以下が約7割を占めるようになりました。つまり、若い世代が移住を考えているようになっているんですね」

吉冨さんはこういった「二地域居住」にまつわる現在のトレンドからスタートし、続いて話題はニーズの変化へ。

「テレワークが定着して働き方も多様化し、選択肢の幅が大きく広がっています。以前は『いつか良い場所があれば…』といったペースでのご相談も多かったのですが、最近は『一年以内をメドに考えている』や『子どもの成長に合わせたタイミングで自然豊かな環境に移りたい』といった、比較的近い未来で具体的にお考えの方が増えています」。

こうしたトレンドに対し、第二の住民票とも言われる「ふるさと住民登録制度」や子どもが学区をまたいで就学を継続できる「区域外就学」といった国や自治体側の対応、また都市と地方の両方の良さを教育活動に取り入れることができる「デュアルスクール」などのサービスを紹介。

二地域居住や多拠点生活の制約や課題に対するハードルが下がったことで身近になり、実際にそういった暮らしをスタートさせる人が増えているとのお話でした。

ツバメは多拠点生活のスペシャリスト

つづいて、ツバメの研究を手がける北村さんのプレゼンテーション。

「考えたこともなかったのですが、今回のテーマを与えられて気づきました。ツバメって、多拠点生活のスペシャリストなんだと」

そう話し会場を笑いで包むと、「ツバメの研究というとほのぼのした印象かも知れませんが、実は兄弟の仲が悪かったり浮気が多かったり、知れば知るほど面白いんです」と、ツバメをはじめとした渡り鳥の生態や特色について紹介いただきました。

衣・食・住をキーワードにしたツバメの紹介は特にユニーク。

「ツバメはメスがオスを選び、モテるモテないがすごくあるんです。見栄えの良いオス、つまり“衣”が魅力的なオスがとにかく選ばれます。“食”は命の基本。日本に生息するツバメは豊富なエサを求めて夏期は国内で過ごし、秋頃からは東南アジア地域に渡ることが分かっています。そして“住”は、巣や棲む地域のこと。ツバメは自分が生まれた地域に棲みますが、まったく同じ場所に棲むことはありません。渡った先から日本に戻ると最初は他のツバメが残した古い巣を活用して1回目の繁殖をします。その後に巣を新築して、2回目の繁殖を行うんです」

参加者は興味深く北村さんの話に聞き入りました。そして後半はクロストークに。

吉冨さんが「日本に戻ったツバメは、誰かが残した古い巣に入るとは知りませんでした」と驚きを見せると、北村さんは「一刻も早く安全に子育てをするためです。古い巣があるということはエサの状況も安全面も良い可能性が高いということなんです」と回答。吉冨さんは「人の移住のヒントになりますね」と納得の表情でした。

一方の北村さんは、「多拠点生活に興味はあるけれど、場所の選定や移動のコスト、さらには仕事のことなど障壁がありすぎて、具体的なイメージがまったくつかないんです」と相談。吉冨さんは自身の経験や最近の事例などを交えながら、「いきなりこの場所と言うのではなく、その場所に実際に触れたり、居住者と交流を持ったり、少しずつ輪の中に入っていって選ぶことが望ましいですね」とアドバイスを贈りました。

モデレーターの鈴木は温暖化の影響で渡りをやめた“越冬ツバメ”の事例に触れ、北村さんは「人もツバメも同じく変化の中にありますね」と応じました。

また土金が「ツバメは子育てが終わると一家が解散して、それぞれが好きな場所に渡っていくことを知りその自由さは羨ましくなりました。人は基本的に家族という単位で暮らしますが、その家族観に変化の予兆はありますか?」と問うと、吉冨さんは「各々が求めることを大切にしながら別の拠点で暮らすケースも実際に聞くので、我々が思っている以上に多様かもしれません」とのことでした。

このように多拠点生活とツバメの暮らし、2つの視点を交差させながら、さまざまな話が広がりました。

今回、ツバメを“多拠点生活のスペシャリスト”と捉えて深掘りしてみることで、意外なライフスタイルや家族観が見えてきました。また集うことで生じる共有意識や行動変容を捉えなおすことの重要性も改めて感じました。人の暮らし方や働き方、子育てなどのニーズが変わりつつある今、わたしたちプランナーやデザイナーが企画・デザインする新しい「居場所」に向けたヒントがいくつも垣間見えました。

ツバメがこの季節に渡る東南アジアの味を楽しむ、美味しい交流会!

クロストーク終了後は、食や飲み物を楽しみながらの交流タイムへ。

この日のテーマの「ツバメ」が、本イベントが開催された9月頃より東南アジアへと渡ってゆくことにちなんで、東南アジアの料理や飲み物をご用意しました。

飲食を堪能しながら、ご参加いただいた幅広いバックグラウンドをお持ちの方々との会話が弾みました。

またサプライズとして、北村さんからツバメの浮気研究についての特別講義も実現。会場からは質問が相次ぎ、最後まで熱気あふれる時間となりました。

ありがとうございました!

参加者の声

二地域居住とツバメの話がどうリンクするのか?と思いましたが、思わぬところでの関係性があり、とても興味深く聞かせていただきました。活発な質疑応答の雰囲気もさすがだなと、思いました

近年人気が高まっている多拠点生活についての調査結果などがグラフで示されており、具体的なデータを見ることができて大変興味深く感じました。また、ツバメの浮気のお話も非常に面白く、質疑回答も含め、もっと聞いていたいと思うほどでした

人とツバメの棲み方を比較しながら未来を考えるというテーマ設定に、creative Lab.らしさを感じ、非常に面白かった。時間があっという間に終わってしまった

次回の「人と空間のちょっと未来」もお楽しみに! 

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